ベースは評価の難しいパートです。
例えば、ギターなら速弾きが出来るギタリストはステージで目立てます。
例えば、ドラムならリズムコントロールのしっかりしたドラマーは引く手あまたでしょう。
しかし、ベースとなると正確なリズム感は当たり前。
それでいて、スラップソロで目立ち過ぎてはボーカルやギターの邪魔になります。
ベーシストには、リズム感という必要最低限の条件と歌のサポートに徹する思慮深さが同時に求められるパートなのです。
バンドアンサンブルにおける良いベーシストの条件を考えてみましょう。
目次
◆バンドをサッカーに例える
バンドの各楽器(パート)をサッカーのポジションに例えて考えてみましょう。
ドラムはゴールキーパー。
唯一手を使う事が許されたゴールキーパーは、ゴールを守る最後の砦で、バンドのリズム=底辺を司るポジションでしょう。
フォワード(FW)は、ギターとボーカル。最前線で自在に動き聴衆の耳目を集めるのが役割です。文字通り、フロントのポジションです。
ミッドフィルダー(MF)はキーボードかも知れません。中盤で前線を俯瞰しながら攻撃と守備の要となります。
◆ベースのポジションは
ドラマーがゴールキーパーなら、ベーシストはディフェンダー(DF)です。
ゴールキーパーとともにバンドのボトムを支え、DFラインを守ります。
時にはDFラインを上げてFWを鼓舞したかと思うと、カウンター攻撃を迎え撃つためにDFラインを急展開させます。
守りの思慮深さと身の軽さの二つが求められます。
◆ベーシストに求められるもの
サッカーは点取りゲームであり、失点すれば負けるように、バンドはリズムコントロールのミスが失点につながります。ゼロに抑えて当たり前なのです。
ドラマーと作り上げるテンポが崩れれば、ギターソロは見せ場を失い、ボーカルは歌い出す事すら出来ません。
ベーシストにもドラマー同様、リズムコントロールは最重要事項です。
バンドアンサンブルにおいて、ギターやキーボードを「上物(ウワモノ)」という考え方があります。
例えば、ギター、キーボードが「C」のコードを弾いた時、ベースが「A(ラ)」の音を出せば、バンド全体では「C」コードではなく「Am7」の響きに変わります。
つまり、ベースの音を変えるだけでバンド全体のコードの響きをメジャーからマイナーに変える程大きな影響力をベースは持っているのです。
バンドアンサンブルで上物であるギターやキーボードを支えているのは、ベーシストの力なのです。
◆古今のベーシストに見る実例
概念論やサッカーへの例え話ではなく、古今の実例で良いベーシストの条件を探してみましょう。
「Don't Let Me Down」ビートルズのスローナンバーから。ベースを弾いているのはポール・マッカートニーです。
スローな曲でありながら、音数の多いベースフレーズが印象的です。
歌うようなベースラインから一転、ギターとのユニゾンをしっかりと固めてバッキングを演奏しています。
ポールのベースラインは、この様に歌うような自由奔放さと基本のツボを押さえた匠の技にあります。
「flower」L'Arc〜en〜Ciel TETSUYAのベースラインも動きのあるフレーズとダウンピッキングのタイトさがミックスされた特長的なものです。
この二人のベーシストに共通するのは、「歌うようなベースライン」と「タイトなリズムコントロール」です。
ドラマーと、あるいはギターとリズムをキープしながらボーカルのバックをしっかりと支える。
歌心のあるフレーズでボーカルやギターを鼓舞する。
その二面性は、サッカーのDFに求められるタイトな守りと前線を鼓舞する攻撃的なDFラインの二面性に共通するものです。
◆まとめ
サッカーとの例え話と古今のベーシストの実例からベーシストに求められる条件を考えてみました。
守備と攻撃の二面性。これがベーシストに求められる条件ではないでしょうか。
主な任務はドラマーとバンドアンサンブルのリズムをコントロールする事。
時にはボーカルやギターを煽るようなフレーズでバンドサウンドに刺激を与える。
しかし、決してDFラインを崩す事なくドラマーとゴールを守る。
守備と攻撃の二面性こそベーシストの条件と言えそうです。