ミックスボイスについて、前回は仕組みと出し方のコツをご紹介しました。
今回はより具体的にミックスボイスの持ち主であるボーカリストにスポットをあてて、その魅力をご紹介します。
目次
◆声という才能
ミックスボイスも含め、ボーカリストは「声」という才能を持っています。
常人では出し得ない高い声を楽々と歌い上げ、驚異的なハイトーンで聴く人を魅了するその才能は持って生まれたものです。
もちろん、プロである以上、努力は人の見えない場所で怠らないでしょう。
しかし、努力だけでは手に入らないものが持って生まれた声であり、才能なのです。
◆ミックスボイスその1・小田和正
ここからは、ミックスボイスが特徴的なボーカリストをご紹介します。
まずは、小田和正さん。
70歳を超えてなおアリーナクラスのライブを精力的にこなし、長いキャリアとそのハイトーンを活かした楽曲が独自の世界観を作っています。
小田和正の歌唱の特徴は裏声を使わずにハイトーンを出す事。
そして、その歌声とは裏腹に話す声は低く掠れている事。
これはつまり、声域全てをミックスボイスで歌っている事の証しです。
◆ミックスボイスその2・西川貴教
圧倒的な声量と広い声域をカバーする西川貴教さん。
先述の小田氏とは違って話す声もハスキーで高い声が特徴です。
高い音になっても地声のまま歌いきるスタイルは、ミックスボイスの遣い手ならではです。
話し声も高い事から分かるように、生まれついてのミックスボイスの持ち主である事がうかがえます。
やはり、努力以外に声という才能を持って生まれた選ばれしボーカリストなのでしょう。
◆ミックスボイスその3・稲葉浩志
日本のロック界で存在感を示すB'zのボーカリスト、稲葉浩志さん。
彼の歌唱法は一声だけで稲葉さんと分かるほど独特の声をしています。
加えてどんな高い音でも地声で歌いきるロックスタイルのボーカルは、松本 孝弘さんの骨太なギターと相まってB'zの特徴でもあります。
稲葉さんもやはり、全ての声域で裏声を使う事なく高い音まで地声で歌います。
地声と裏声の換声点がないミックスボイスである事の証明です。
B'zと言えばそのライブパフォーマンスも魅力ですが、タフなライブツアーも全力で最後まで通す体力は、ノドのコンディション管理にも裏打ちされているのでしょう。
ノドという肉体が楽器であるボーカリストは、ベストパフォーマンスのために自らのコンディションにもジビアに向きあっているのです。
◆ミックスボイス洋楽編・ポール・マッカートニー
ロックにとどまらず音楽に革命をもたらしたビートルズ。
そのソングライティングの才能とボーカリスト、ベーシストと多方面な才能の持ち主がポール・マッカートニーです。
世界中のアマチュアバンドたちがカバーしたビートルズの楽曲はキーが高く、それだけでアマチュアにはハードルの高いものでした。
高い音を時にシャウトし、時にファルセットまで使い分けて、ミックスボイスだけにとどまらない幅広い歌唱力を聴かせてくれます。
ミックスボイスでさえひとつの表現方法として体得した、数少ないボーカリストがポール・マッカートニーなのです。
◆ミックスボイスの意味
ポール・マッカートニーの例でも述べましたが、ミックスボイスは歌唱法のひとつに過ぎません。
高い声をファルセットで歌うか、ミックスボイスで歌うかはボーカリストの判断や表現力、コンポーザー、プロデューサーの判断に任されています。
高い声の全てがミックスボイスで歌われているわけではありません。
楽曲によってはファルセットと地声で歌い分けた方が、聴衆に伝わる事があります。
つまり、ミックスボイスを修得したからと言ってボーカリストとして成長したわけではなく、表現方法をひとつ手に入れたに過ぎません。
ミックスボイスという歌唱テクニックを活かすも殺すもボーカリストの腕次第です。
◆ミックスボイス・まとめ
表現の幅が広がる事はボーカリストだけでなくミュージシャンにとって有用な事です。
しかし、真の表現力は聴衆に伝わってこその表現です。
是非、ミックスボイスをマスターして聴衆に伝わる表現力を身につけ、ボーカリストとしての幅を広げてください。