低い音から高い音まで同じ声質で歌うミックスボイス。
地声と裏声、二つの要素を持つミックスボイス。「ミックスボイス」の定義には諸説あります。
今回は、高い音を魅力的に発声するミックスボイスについてご説明します。
目次
◆ミックスボイスの定義
”ミックスボイス”で検索すると、いくつかの説があります。
ここでは「ミックスボイス」を「地声」と「裏声」を切り替える事なく、同じ声質で低い音から高い音まで同じ声質で歌う歌唱法と定義してご説明します。
◆換声点(パッサッジョ)という事
多くの人は地声と裏声を持ち、歌うキーによって使い分けています。
低い音から声を出し始めて、次第に高い音へキーを上げていきある音で裏声に変わります。
この裏声に変わるポイントを「換声点(パッサッジョ)」と呼んでいます。
ミックスボイスにはこの換声点がありません。
高い音でも裏声になることなく地声と同等の力強さで歌う歌唱法がミックスボイスなのです。
地声と歌声の二つが交じったような歌い方なのでミックスボイスと呼ばれるようになったのでしょう。
◆ミックスボイスの特徴
多くの男性ボーカルの特徴として地声は力強く、裏声は高い声で澄んだ響きを持っています。
しかし、歌声は高く澄んだ声であるがゆえに、力強さに欠けるというデメリットがあります。
もし、地声の強さのまま高い声を歌う事が出来たら。
そんな発想から生まれたミックスボイスは、低い音から高い音まで地声のまま発声出来るように、トレーニングを積んだ結果、身に付けられる歌唱法です。
ミックスボイスの特徴は、裏声の要素を持ちながらもフワッとした発声ではありません。
「裏声の特徴」と「力強い地声の特徴」もある不思議な感覚がミックスボイスの特徴です。
その感覚を見つけることがトレーニングの鍵となりますが、それは独特で人それぞれ異なります。
この感覚を修得出来ればミックスボイスの発声はどんどん安定します。
◆ミックスボイスの出し方
地声でも裏声でもないミックスボイスの発声法は独特です。
通常、高い声を出そうとする時には、声帯を締め付ける強さや振動する面積を変えることによって声の高さをコントロールします。
これに対し、ミックスボイスは主に声帯を伸ばすことで声の高さを変えています。
つまり、地声で高い音を出す発声法とは根本的に使う筋肉も異なるのです。声帯を伸ばすには、「輪状甲状筋」という筋肉を使います。
では、「輪状甲状筋」はどこにあるのか?という事になります。
発声器官である声帯は咽頭という部位の中にあります。この咽頭の中には「甲状軟骨」と「輪状軟骨」という2つの軟骨があります。
そして「輪状甲状筋」は、甲状軟骨の中に入っている筋肉の事なのです。
ミックスボイスが出る仕組みとしては、輪状甲状筋が収縮すると甲状軟骨が前方へと引っ張られるように動きます。
すると、その中にある声帯も引っ張られて伸び、これにより高い声が出るようになるのです。
例えるなら、弦を強く引っ張ると高い音が出るのと同じ原理です。
喉(声帯)の奥にある輪状甲状筋を意識して動かせるようになるには時間がかかります。
トレーニング方法はいくつかありますが、まずは自分の輪状甲状筋がどのように動いているかを自覚しましょう。
喉に左右から指を軽くあてて、裏声(ファルセット)で歌ってみましょう。
自分で無理なく出せる裏声の声域で低く、次第に高く。逆に高い声から低い声へ。
次に、地声でも歌ってみましょう。
喉に左右から指を軽くあてて、低く、次第に高く。
逆に高い声から低い声へ。
裏声と地声で声帯周りの筋肉(輪状甲状筋)がどのように動いているかを確かめてみましょう。
ある音で輪状甲状筋の動きが変わるポイントがあるはずです。
人によってそのポイント=換声点(音の高さ)は異なりますが、そのポイントのピークを少なくする事がミックスボイスの出し方のコツです。
裏声と地声で低い声、高い声を繰り返しトレーニングして換声点のピークをコントロールして下さい。
◆ミックスボイスのメリット
裏声のような高い音で地声の力強さを出すのがミックスボイスのメリットです。
プロのシンガーには地声の声域が生来高い人もいて、その声域の高さを活かしてミックスボイスで全ての曲を歌いきる人もいます。
地声ならではの声量コントロールの幅広さもミックスボイスのメリットと言えます。
◆まとめ
今回は、ミックスボイスについて仕組みやコツをご紹介しました。
次回は、より具体的なミックスボイスについてご紹介しようと思います。